
大学卒業後、イギリスにワーキングホリデーに行った話は自己紹介でもしましたね。
大学在学中にはカナダへ一年間留学していたこともあり、それなりの仕事に就きたいという気持ちもありましたが、まずはイギリス生活に慣れるために日本食レストランで働くことにしたのです。
あまり知られていない話ですが、日本から海外へワーホリしに行っている人の中には日本食レストランで働いている人が結構しまして、その中でも強者にもなると1〜2年しかないワーホリ期間のすべてを一軒の日本食レストランに捧げていたりしています。
一途ですよね。
恋人にしたら一生幸せにしてもらえそうです。
日本食レストランは日本人ならすぐに面接を受けられ、到着した次の日からだって働くことができたりとメリットもあるのですが、働いているほとんどが日本人だったり、法外に時給が安かったりとデメリットもあります。
せっかく海外で働けるのに日本食っていうのも、、、っていう心理的な抵抗も少なからずあるでしょう。
なので僕は予め2ヶ月という期間を設けて日本食レストランで働き、その間に他の仕事を探すことにしました。
海外で働くといってもいろんな種類の仕事があるわけでして、特にやりたいことのなかった僕はオシャレっぽいという理由のみでスターバックスに履歴書を配ってみることにしたのです。
履歴書はもちろん英語で記入しないといけないので、ネットでサンプルを探し、コピペでそれらしいものを作成してみました。
完成した履歴書を配りに行って判明したことなのですが、スタバでは専用の履歴書が必要だったのです。
で、非常に苦労したのがその専用履歴書を入手すること。
どの店に行っても手元に履歴書がないと言われ、他の店舗に行くよう勧められます。
「僕を雇いたくないんだろうな」と察しつつも、そこで引き下がるわけにもいかないのでロンドン中のスタバを渡り歩き、7軒目のスタバでようやくその用紙を手に入れることに成功しました。
もうこの時点で十分やりきった感はありましたが、その貴重なスタバ専用履歴書に必要事項を書き込み、受けたこともないはずのTOEICの点数「840点」もしれっと書き込み、10枚ほどコピー。
そして街中のスタバへと配りに行きました。
「仕事を探しています。面接してもらえませんか?」と伝えてみるのですが、履歴書を受け取ってもらうのが精一杯。
10軒ものスタバを訪れたのに、どの店も「後で電話する」ということだけ告げられ追い返されてしまいます。
でも、やれることはやったはず。後は連絡を待つだけ。
それから2週間…‥。
待てど暮らせど一向に連絡が来る気配はありませんでした。
まあそんなもんだろうなと。
ネイティブスピーカーでもない自分なんかが海外で簡単に雇ってもらえるわけがない。
スタバは諦めて違う作戦を実行することにしました。
その違う作戦というのが「紹介作戦」。
すでに働いている友達に紹介してもらうという至極シンプルなもの。
ただ履歴書を撒き散らすだけでは効率が悪いと考え、内部から確実に攻め落とす作戦をとることにしたのです。
そこで白羽の矢が立ったのが、某有名アパレルで働いていた友人でした。
早速、その友達に「職場に空きがあれば紹介してほしい」と伝えてみました。
スタバの件もあるし、そんな簡単に仕事なんてもらえるわけがないだろうなと思っていたら、、、
なんと翌週に面接を受けさせてもらえることになったのです。
上手く行き過ぎていて逆に怖くなるほどでした。
スタバなんて連絡すらしてくれないのに、カフェよりも敷居の高いアパレルで面接をしてもらえることになるなんて。
このチャンスを逃したら次はないかもしれない。
当たり前の話だけど本気で面接に臨むことを決意しました。
イギリスを訪れるのはその時が初めてだったということもあり、何度かイギリスに行ったことのある叔母から出国前にアドバイスをもらっていました。
そのアドバスというのが「スーツを持ってけ」というもの。
ワーホリでスーツなんてものを持ってきていた日本人に出会ったことは一度たりともなかったことはさて置き、「今こそスーツの出番だ」と確信した僕は面接にスーツを着ていくことにしました。
面接をしてくれることになったのは、オックスフォードストリートというロンドンでも指折りのショッピングストリート沿いに構える大きなお店。
大勢の客が出入りしているところを見るだけで尻込みしてしまいそうになるほどでしたが、こんなところで怯んでいては面接なんて通るはずもない。
面接のときだけは別人になりすまそうと決意し店の中へと入っていきました。
入口付近にいたスタッフに面接しに来たことを伝えると、地下にある薄暗くて狭い部屋へと案内されました。
秘密基地のようなその部屋は、ミシンなどが置いてあることから裾直しをする場所であることがわかりました。
そこで待つこと数分、一人の黒人女性がやってきました。
この店にはマネージャーが3人いたのですが、彼女はその中の一人。
彼女は後に僕のパワハラ上司となり見事なまでの上下関係を築いていくことになるのですが、その時は非常に穏やかで優しい印象を受けました。
面接では難しい質問など一切されることなく、「スーツで面接に来た人は初めてよ」なんて褒めてくれたり、なんなら面接時間のほとんどがスーツの話だったんじゃないかってくらい、ひたすらにスーツの話で盛り上がりました。
たわいもない話にかけた時間の方が圧倒的に長かったし、履歴書もまともに見てなかったはずなのに、なんと翌日から雇ってもらえることになったのです。
友達がこの店から信頼されているからこその採用だろうなと感謝しつつ、本来なら確実に必要のなかったはずのスーツをイギリスに持っていくことを勧めてくれた叔母にも同じくらい感謝しました。
アパレルで働き始めた後、続々と履歴書を配ったスタバから電話がかかってきたのですが、時すでに遅し。
「貴重な人材を逃してしまったことを後悔するがいい」と心の中で思いながら断りを入れました。
そして、ハズレくじを引いてしまったそのアパレルで、1年半ほど働くことになったのです。
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