
日本で財布を失くしても戻ってくることって結構あるじゃないですか。
多分韓国にもそういう優しい人がいて、他の国と比べたら落し物の帰還率って高いと思うんです。
そもそも我々の国では物が盗まれるってこと自体が少ないかなと。
あのヨーロッパですらカフェやレストランではスマホや財布を机の上に置いておかないという鉄則があるのですが、日本や韓国では普通に置きますよね。
僕はパソコンを置いたままトイレに行ったりもします。
そんなこと他の国でやったら2秒でパソコンなくなりますよ。
そして大馬鹿者と呼ばれるでしょう。
そういうことを考えると、韓国も日本と同じように悪いことをする人が少ないんだと思います。
これは僕が韓国の居酒屋で働いていたときの話です。
ある日、店のすぐ外にあるベンチで財布を拾いました。
喫煙中に落ちたものだと思います。
拾ったときにはそのお客さんは既に帰っていました。
で、後から連絡がきまして、社長は財布を拾ったことを伝えたのです。
普通なら「ありがとうございます。すぐに取りに行くので保管しておいてください」てきなことを言ってめでたしめでたしじゃないですか……。
誰にだって財布を失くしたことくらい一度はあるかと思います。
僕も2回あります(買って一週間でiPhoneを失くしたこともあります)。
そのときの絶望感たるや。
軽く心臓が止まりかけますよね。
「これから真面目に一生懸命に生きていくんで許してください。もう二度と鼻くそをトイレの壁につけないから」
みたいなこと(内容は若干違えど)を神様にお願いすると思うんです。
そして見つかったときの嬉しさたるや。
生まれ変わったんじゃないかってくらい善人の気持ちになります。
「本当にありがとうございます。約束した通り明日から早寝早起きするし、勉強もします。なんなら募金とボランティアも」
って神様にお礼を伝え、それまでの悪い行いを悔い改めると思うんです(結局、翌日から何もなかったかのように普段通りの生活を送ることになるんですけども)。
でもその人は僕よりも腐った根性をしていまして、電話越しに社長にこう言ったのです。
「バイク便で送ってくれ」
その日は週末だったこともあり忙しく、正直それどころではありませんでした。
それでも送るよう命じる図々しい女性。
社長「今忙しいんで」
女性「明日必要だから送って」
みたいな感じでエンドレスに続きました……。
これってどっちが間違っていると思いますか?
僕はその女性が間違っていると思います。
だって、落とした財布を拾ってもらい、保管までしておいてくれたわけですから、感謝しなければいけないところですよ?
それをなぜ社長がそこまでしないといけないの?ってなりますよね。
僕はイギリスで財布を落としたことがあります。
その時は奇跡的に発見され、入っていた銀行カードのおかげで僕に連絡が来たわけなんですが、それがとんでもなく遠い場所にあったんです。
ロンドンの地下鉄はZONE1~ZONE6というエリアに分かれていまして、遠くなるほど数字が大きくなっていくのですが、ZONE1で失くした財布がまさかのZONE6にある銀行に届けられていたのです。
それでも僕は電車に乗って取りに行きましたよ。
近所の銀行に送れ、なんてことはいいません。
むしろ感謝して取りに行ってきたほどです。
財布の中に入っていた現金はなくなっていましたが、カード類はすべて無事でした。
不幸中の幸い、優しめの悪いやつに拾われてよかったです。
入っていた現金数百円に対して、オイスターカード(日本のSuicaみたいなやつ)には数千円分お金が入っていたのに、なぜか無事だったという意味不明なことが起こりましたが、とにかく助かりました。
そんな経験をしているからこそ、その女性客は自分で取りに来る(または自分でバイク便に連絡して取り行かせる)べきだったと思います。
結局社長がバイク便で送ってあげることになったんですけどね。
あのときほど社長の口から汚い言葉を聞いたことはありません。
日本語では言い表せないらしいヤバめな言葉が、怒り狂った社長とヒョンたちの間で飛び交っていました。
で、最終的に社長は僕にこう言いました。
「店の外にある落とし物は拾わないでね」
僕は思いました。
落とし物が戻ってきすぎる社会、それはそれでとんでもないモンスターを生み出すこともあるんだなと……。
何があっても感謝の気持ちだけは忘れずにいたいと思います。
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